安価な(安易ではない)日食観測用メガネ制作

 
 
■2009年7月22日は、ご存じ「皆既日食」の日となります。
 
 そしてさらにご存じの通り、太陽光線にはかなりのエネルギーが含まれておりますので、直接目で見ることは大変危険です。
 
 しかし日食で太陽が欠けていく様子を見たいのも人情です。
 
 そこでなるべく身近なもので太陽観測用のメガネを安価(安易ではない)に作ってみました。
 
 なぜ「安易ではない」と強調しているかというと、いくら安価に作っても見る物は「太陽」ですので「安易」に使用しては失明する可能性があります。
 
 よって、作成後には光が漏れないか等の動作確認を行ってからご利用ください。
 
 太陽光が洩れていると直接目で見ていることと同じになってしまいますので、十分な確認をお願いいたします。
 
 
■太陽を見るためのフィルターの材料としては、太陽の光をほとんど通さず、しかしながらごくわずかに通すという微妙なものが必要です。
 
 今回はコーンフレークの中袋に着目してみました。
 
 実はお菓子の銀色の袋は薄いアルミが使われていて、少しだけ光を通すいちばん身近な素材なのです。
 
準備するもの
準備するもの
 
 おまけに大きなコーンフレークの箱なら、観測メガネフレームの材料になるボール紙の外箱も大きくて工作に有利です。
 
 今回のコーンフレークは、市街地の薬局で300円以下で売っていました。
 
 ちなみに商品名は「シスコ製 シスコーンBIG 240g マイルドチョコ味」です。
 
 中身は使いませんので、好みの味を選んで別な袋に移してのんびり食べてください。
 
 大事なことは、この中袋になるべくシワをつけないようにすることです。
 
 必要なものをまとめると、シスコーンBIGの外箱、中袋、糊、カッター、カッター台、定規…ですね。
 
 
■まず、メガネフレームを切り出します。
 
 写真「メガネフレームの切り出し」を見ていただければ、箱のどの位置を切り出したかわかるかと思います。
 
メガネフレームの切り出し
メガネフレームの切り出し
 
 参考サイズは写真「目の抜き型」に記入してあります。
 
 なるべく長い部分で耳掛けまで全体の材料とし、フィルターをはさむ部分は切り離さずに折り返しのままにしておくのが楽かと思います。
 
 設計の基本はフィルターのまわりを十分広くして、フィルターを通らない太陽光線が目に入らないようにすることだと思います。
 
 写真「目の抜き型」は、目の穴をくりぬく時の自作の定規みたいなものです。
 
目の抜き型
目の抜き型
 
 同じものをいくつか作る時には、このような道具を先に作っておくと便利です。
 
 メガネの中央線に目の抜き型の左端を合わせて片側をくりぬいた後、目の抜き型を裏返すようにして反対側の型として利用します。
 
 目で覗くフィルターの窓はそれぞれ30mm×20mm、フィルターをはさむ部分の全長は116mm×60mmとなります。
 
 その左右に120〜130mmほどの耳掛けの部分がつきます。
 
 耳掛けは適当なデザインで構いませんが、あまり細くならないようにしたほうが壊れにくくて良いかもしれません。
 
 
■フィルターをメガネフレームに貼ります。
 
フィルター貼り
フィルター貼り
 
 このフィルターは、太陽を見る専用のものではありませんので、一枚では十分に暗くなりません。
 
 私の試したところでは、これを3枚重ねたぐらいが丁度良い暗さになるようでした。
 
 今回の日食観測メガネでは、コーンフレークの中袋から100mm×30mmを3枚切り出して使います。
 
 そのうち2枚を、写真「フィルター貼り」のようにそれぞれの面に貼り、残りの一枚はその間に挟み込みように折り返し面を貼り付けます。
 
貼り合わせ構造
貼り合わせ構造
 
 最終的なフィルター部分の断面は、写真「貼り合わせ構造」のような構造になります。
 
 

ご使用前に十分チェックを!

■糊が乾くのを待って完成です。
 
 完成後はいきなり太陽を見ないでください。
 
 正しくできたかどうか、観測メガネの後ろに紙を当てて太陽に向け、太陽光が洩れていないかを確認したり、覗くときも最初は明るい雲を見たりして動作をよく確認してから使用してください。
 
 ここでは観測メガネを2つ作り、1つはカメラのレンズにかぶせるフィルターフードを作ってみました。
 
完成作品
完成作品
 
 フィルターフードは、カメラのレンズの先にちょうどはまるような形になっています。
 
 観測メガネだけなら今回の材料で3つ分が切り出せますので、1つ分は100円以下で完成することになります。
 
 それでもまだフィルター(コーンフレークの中袋)は余っていますので、ティッシュの箱などのボール紙でメガネフレームを作ればまだいくつか作ることができます。
 
 早速、今回制作したフィルターフードを使って太陽のテスト撮影をしました。
 
テスト撮影
テスト撮影
 
 撮影結果は、若干ハロ(ここでは明るい部分の周囲がにじむ現象のこと)が多めに見られますが、高精度を期待した撮影ではありませんので十分かと思います。
 
 使用するカメラはマニュアル撮影ができるものですので、フィルターは2枚重ねで使いカメラ側で十分に露出を落して撮影することにしました。
 
※撮影日:2008年8月30日 カメラ:OLYMPUS SP-560UZ
   ISO50 486mm(35mmカメラ換算) F8 1/2000秒
 
 

さらにご注意!!

■今回はコーンフレークの中袋を使用して太陽観測メガネを作りました。
 
 お菓子の袋は品質を維持するため、アルミ蒸着フィルムでできています。
 
 このフィルムを3重にすることは減光のためだけでなく、ピンホール(光の漏れる小さな穴)発生の危険を減らすことにもつながります。
 
 しかしながら、観測する相手は強いエネルギーを持った「太陽光」ですので、ご使用前に十分慎重にチェックしてください。
 
 本物の太陽観測用フィルタにも「もしピンホールがあるようなら廃棄すること」と取扱説明書に注意書きがあるそうです。
 
 つまり、ちゃんとした(販売している)太陽観測用のメガネでも、ご使用前には十分に光漏れの確認をしたほうがよいということになります。
 
 さらに、太陽観測メガネを子供たちが使用する場合には、大人が十分動作を確認してから与え、観測中はそばについて安全を確認してください。
 
 また、今回のお菓子の袋フィルターでは、紫外線透過率や赤外線透過率などを確認したわけではありませんので、長時間観測や、双眼鏡などのレンズを通した観測には絶対にご使用にならないでください。
 
 十分確認された観測メガネでも、一回の連続した観測は数分に留めてください。観測はかなり目を疲労させます。
 
 かなり注意事項が増えてしまいましたが、それだけ危険であることをわきまえた上での観測をお願いいたします。
 
 

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